relativity
2020月12日31
『アインシュタインの相対性理論は誤っている』
参考文献
1)新相対性理論:仲座栄三、ボーダインク、180p.、2015
2)相対性原理に拠る新たな相対性理論:仲座栄三、沖縄科学防災環境学会論文集(Physics) Vol.5 no.1 p.1 -14;http://okinawa-repo.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/20.500.12001/24526
この表題は、現代の我々にとって、衝撃的に受け止められよう。
いや、むしろ、完全無視されるか、馬鹿なことの対象と考えられるのではなかろうか。
アインシュタインの相対性理論が発表されて来、100余年にもなるが、いまだそれは尊敬の念をもってまでも信じられているし、現代科学の基盤を成すとまでにも認識されている。だが、誤りは誤りである。
「時空が歪む」とするアインシュタインの相対性理論を信じる立場からは、物理学的思考が死に帰す。そのドグマから抜け出し、新しい物理学を指向する道を模索すべきである。
私自身、長年、アインシュタインの相対性理論を真として崇めてきたのである。だが、それを学べば学ぶほどに、それにまつわるパラドックスが現れ、その説明に対する物理学界の説明が、まったく腑に落ちないのである。木に竹をつなぐような説明、に、まったく納得できないのである。
その解決に、私自身、長年苦しむことになるが、ついに、それが氷解するときがきた。確かに、アインシュタインは間違っていた。
彼は、光の速度(すなわち、電磁気学の基礎理論)が古典力学におけるガリレイの慣性の法則と相容れないことのジレンマの解決に苦しんでいたのだが、彼を射した光明は、「時空の相対論」であった。アインシュタインは、光の速度不変の法則を説明するために、すなわち光速度に対して通常の和の法則が成立しないことを説明するために、時空を歪ませ、すべての物理現象に対する慣性の法則をローレンツ変換に位置付けたのである。この瞬間から、物理学は、神話化の一途をたどる運命に位置付けられる。
無理もない、当時は、光を伝えるエーテルに対する地球の運動が想定されており、エーテルに対して運動するものはその運動方向に縮むとする考え方があったし、時間経過すらも絶対的に一定ではないとする考えがあったのである。アインシュタインは、そのような考え方の論拠を見出すことに苦慮していたと述べられている。だが、彼は、友人からの助言の後に、「時間の同時性の相対論」に気づくのである。それによって、構築されたのが、アインシュタインの時空の相対論である。こうして、アインシュタインの相対性理論の本質は、『時空の相対論』と言える。
「光の速度は地球の運動に無関係に、一定である」実験結果が示すこの事実と、ローレンツが苦労して見出したローレンツ変換が示すマクスウェル方程式の同形変換は、アインシュタインをして『時空の相対論』の形に相対性理論を生み出させたのである。
だが、こうして生まれたアインシュタインの相対性理論は、その時空に関して、数々のパラドックスを派生するものとなった。このことは数多くの論争を伴うことになるが、それにまた多くの者達が翻弄されることになる。
アインシュタインの相対性理論に異議を唱える者達の腑に落ちない点は、「アインシュタインの相対性理論は、彼がその構築の際に打ち立てた相対性原理そのものに背く」ということに集約されよう。「アンシュタインの相対性理論は本末転倒の論理である」と指摘され続けてきたのである。このような指摘には、著名な物理学者らも名を連ねる。だが、そのような物言いが成功を収めることはなかった。これには、アインシュタインの相対性の正しさを示す数々の物理学実験結果がはだかった。
物理学実験結果の全てを説明し、そして一切のパラドックスも派生しないような、そして直ちに腑に落ちる、そのような理論が存在し得るか?
仲座は、これらの問題を解決するために、光測量の観点から相対性理論を構築し直した。その結果現れたのは、時空の相対論ではなく、相対論的電磁気学であった。
アインシュタインが不必要なものとして物理学から葬り去ったニュートンの絶対的な時空の概念が再び時間の概念として物理学に位置付けられる。しかしながら、その時空はニュートンが考えていたいわば神の創造物としての絶対静止空間や絶対時間ではなく、我々が物理学的に定義する3次元直交座標系としての空間と正確な時計で測られる時間である。
仲座の新相対性理論において、ガリレイ変換は時空に対する相対論を規定する。その上で、運動物体の電磁気学が相対論的電磁気学として定義される。その基礎を成すのがローレンツ変換である。したがって、新しく構築された新相対性理論では、ガリレイ変換とローレンツ変換が共存する。また、ローレンツ変換は、従来の定義とは異なり、静止系の電磁気学とそれが運動系で観測されるときの電磁気学とを結ぶものとなる。従来、ローレンツ変換は、静止系の時空と運動系の時空とを結ぶものであった。
従来の物理学では、ガリレイ変換やローレンツ変換が物理法則を同じ形に変換することをもって相対性原理を成すと考られてきた。この定義は誤りである。『原理』とは、元来その物理的メカニズムが説明できるものであってはならないはずである。
力学や電磁気学における相対性原理は、いかような観測者も自らが座す系を静止系と位置付け、そこに静止系に対する物理法則が成立することを規定する。なぜそうなっているのか?今は、その物理的メカニズムは分らないが、元来そういうことになっているととりあえずは考えることで、『原理』として位置付けられる。したがって、相対性原理はローレンツ変換など座標変換とは無関係である。相対性原理の下で、静止系から電磁波を用いた計測による運動物体の力学や電磁気学を規定するのが、新相対論である。
新相対性理論によって、ニュートンの運動法則までも修正を迫られる。
一方、アインシュタインの相対性理論は、座標変換が相対性理論の本質を無し、相対性原理の意味をも成す。また、座標変換後に運動系の時空や力学、そして電磁気学が現れると規定している。すなわち、運動系における力学や電磁気学が、相対論的力学及び相対論的電磁気学を成す。
両者の相違は明白である。
かくして、アインシュタインの相対性理論は誤っていたのである。
ここに新しく、正しい相対性理論が位置付けられる。
elasticity theory 08
Keywords: elasticity, fluid dynamics, thermal dynamics, pressure, mean stress, shear stress, bulk viscosity
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参考サイト:http://okinawa-repo.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/20.500.12001/19965
http://data.jci-net.or.jp/data_pdf/31/031-01-1074.pdf#search=%27%E5%BC%BE%E6%80%A7%E4%BF%82%E6%95%B0+%E4%BB%B2%E5%BA%A7%E6%A0%84%E4%B8%89%27キーワード:弾性力学,流体力学,熱力学,圧力,平均応力,せん断応力,体積粘性係数
【復 習】
流体の場合、平均圧力を導入するものの、最終的には、熱力学が規定する圧力に置き換えられる。置き換えるのだが、平均圧力はそもそも圧力でないので、圧力と平均圧力との差の部分を埋め合わせるために、体積粘性係数が導入されている。そうであるなら、最初から圧力そのものを導入すればよい。そしたら、補正項を考える必要も無いし、体積粘性係数の導入を必要としない。その時、静止流体の圧力や Euler が与えた圧力との整合性も完璧に取れる。ただそれだけのことなのである。
補正項は、その後の問題となる。粘性作用と熱非平衡の問題とは全く異なる物理であるので、ニュートンの粘性法則に体積粘性係数は全く関与しない。
「非圧縮性の流体を取り扱うので、私はこの問題にあまり興味がない」という方もいる。それは誤った考え方である。そもそも非圧縮性に対する運動方程式というのは存在しない。存在しないというより、そのようなものを数学的に演繹できない。圧縮性の流体を対象とした運動方程式が存在して初めて、その方程式から一部の項を削除した方程式を通常、非圧縮性の流体の運動方程式と呼ぶ。巷で非圧縮性の流体の運動方程式と呼ばれている Navier の方程式は、単独で非圧縮性の流体の運動方程式を示すことはできない。そのことが通常あまり理解されていないようである。
材料の内部応力に、熱応力、弾性応力、全ての応力を含めたはずなのに、材料が熱でいかように膨張していても従来の弾性理論は何の力でそのような膨張が生じたものかを説明できない。一軸圧縮の際には、横方向にいかように変形していても、内部応力は常にゼロを示す。横方向に、熱応力と弾性応力との和で内部応力状態は高められるはずなのに、それらの合計を示す内部応力は常にゼロを示す。ゼロとゼロを足しても、ゼロに過ぎないのは当然であるが、そのような状況下にある応力とひずみとの関係をフックの法則の一般化と呼ぶことはできない。また、従来の方法では、正しく材料の耐力評価ができない。 これまですでに議論してきたように、弾性力学あるいは材料力学、そして流体力学等で、平均応力を導入し、1/3 という係数や偏差応力を導入する理論は、経験法則をなし得ても、物理法則をなさない。したがって、そのような理論から得られる結果は、正しく物理現象を説明し得ないということになる。
さらに、この新しい理論をぜひ実務や研究、あるいは数値計算などに取り入れたいという方、ぜひご連絡ください。数値計算手法等は、実に簡単です。特に、熱を伴う問題を取り扱う方々などは、従来の手法ではダメです。原子力やエンジンなど、熱を伴うような研究分野、地盤工学、土質力学、間隙水圧、乾燥収縮、地震波を伴う分野、降伏条件に興味ある方、そして破壊力学等を考えている方々への応用が期待されます。
elasticity theory 07
キーワード:フックの法則、平均応力、等方応力、圧力、弾性係数、熱力学、状態量
前回のタイトルは、「平均応力と偏差応力」というものであった。今回の内容は、「圧力と弾性応力」であるが、それらの違いを知ることが新しい弾性理論を知ることに通じる。なお、本講座は、等方性材料を対象としていることに注意を要する。 本講座で紹介している内容は、2005 年に「物質の変形と運動の理論」という形で出版されている。だが、それに表記ミスが多いこと、あるいは誤った解釈があることなども否めない。この点に関しては、改訂に全力を注ぎたい。しかし、聞いていただけるなら、「二世紀にも亘って数々の検証を受け、そして人々に広く受け伝えられてきた既存理論の呪縛から解放されるのは並大抵のことではなかった」という言い訳も聞いていただければと思う。
購入していただいた読者が、それを高い買物と思うか、いや妥当と思うかは、それぞれでしょうが、私としては、新しい理論の提示もさることながら、その検証である第17章の図ー3,4,5だけでも、それ以上の価値があるものではと自負している。読者にそれがどれほどの価値を与えるかを私は想像だにできないが、その3枚の図を皆様にお届けできる事を、私は心から神に感謝している。 第2粘性係数を導入する従来の理論は、何種類かの流体に対し、体積粘性係数が粘性係数と同程度の値となりことを見出している。しなしながら、そうなる事の物理的根拠については何ら説明されていない。それ以上に、従来の理論の枠組みで、内部過程が無視できるような流体運動に対し、体積粘性係数がゼロとならず、粘性係数と同程度の値となるというのも納得しがたい。 体積粘性係数を求めるという実験そのものも相当困難なものであるが、仮にその困難を克服し、実験を行うことができたとしても、内部過程を無視できるような通常の圧力下の通常の流体運動に対し、実験結果は今後とも「いかなる流体も体積粘性係数は粘性係数と同程度の値となる」ことを示すに違いない。しかし、その意味を説明することは出来ない。例え、実験値の平均値が 0.67μ という値を示してもである。
さて、新しい理論では、圧力という概念が導入されている。熱力学は、圧力が状態方程式を通じ密度と温度に関係している事を教えている。さらに、熱力学は、いかなる材料にあっても、状態方程式が PV=RT の形に書けることを教える。この状態方程式を微分してみると、圧力の変動が密度変動と温度変動からなることが分かる。圧力は、密度のみで変動するものでも、温度のみで変動するものでもない。密度と温度の両者のバランスで変動するものである事を熱力学は教えている。
であるが、従来の弾性理論は、”熱膨張ひずみ”という概念を導入し、温度変化に伴う材料の変形を理解できると考えているようである。しかし、熱力学は、熱の作用で材料に膨張を生じさせる力は、”圧力”であると明確に教えている。上述のように、圧力は、温度のみでは変動しないし、温度という1つの状態量の変化のみで規定されるものでもない。その変化を予測するには必ずもう1つの状態量を必要とする。それが、一般的には密度である。当然ながら”平均応力”と”圧力”とは異なるものである。
仲座の構成方程式は、材料の内部応力を次のように定義している。
(力学に関わる読者は、当然ながら式(1)がテンソル形で書かれるものであることを暗黙裡と見なしているものと考える) 式(1)で、右辺第2項がフックの法則を表す。弾性係数が記号 E を以って表されるのは、それが唯一の弾性係数であり、かつ Elasticity の意からである。フックの法則は、材料が非線形性を示す場合であっても、式(1)の右辺第2項の形、すなわち線形の形で表される。ただし、圧力は非線形的挙動を示す。そして、弾性係数は、ひずみに独立であり、一般には圧力と密度の関数である。
読者は、この部分の説明をじっくり思考していただきたい。また、流体の運動がいかように非線形的なものとなっていても、粘性応力項は線形表示であることを思い起こしてほしい。そのとき、ここでの説明の意味が明確となろう。
式(1)の本質は、圧力の導入のみにあるわけではない、最も大事なことは、「等方弾性体に対しフックの法則がいかように書けるか?」という問に正しく答えている点であり、これまでのフックの法則の一般化を否定している点にある。
式(1)は、外力が圧力変動とフックの法則に規定される弾性応力とで支えられていることを示している。さらに、式(1)を次のように変形できる。
すなわち、「内部応力から圧力を差引いた応力(左辺)は、弾性体のひずみ(右辺)に比例する」ことを表し、この左辺(応力)と右辺(ひずみ)の関係がフックの法則を表す。ここで、前回の式(3)や(5)との違いを比較して頂きたい。 さらに、材料の縦方向1軸圧縮の場合を想定すると、横方向に次式が成立する。
ここに、「ポアソンの見た横方向のひずみは、内部圧変動が引き起こす等方ひずみである」ことを示せる。だが、ポアソンは、この等方ひずみを横方向のみに観察した。等方ひずみは、明らかに載荷軸方向のひずみにも表れるものであった。この点を紐解くことがヤング率とポアソン比が客観的に弾性係数になれない理由を説明する事になる。そのことについて読者は考えて頂きたい。
次に、外力の作用がなく、材料が熱を受けて膨張している場合、式(1)は、次のようになる。
温度変化および密度変化による圧力変動が材料に等方変形を引き起こしたのである。圧力変動は、フックの法則に則って、材料に等方変形を引き起こす。圧力変動率は、フックの法則に則って発生する弾性応力と釣合う。よって、内部応力の合計はゼロと判断される。
1軸圧縮試験の際の横方向に、そして熱膨張の際に、材料内部に想定される弾性バネは、式(3)や式(4)が示すように、いずれの場合にも明確にストレスを受けている。いつか、弾性バネは切れるに違いない。
前回説明するように、平均応力を導入する従来の理論では、上述の現象をどのように説明するのであろうか?前回の式(3)や式(5)が意味するものは何であったか?平均応力を以って、熱力学との関連を議論する事はできない。圧力を通じて、熱力学は機械的力学との統合を果たせる。
従来の理論が平均応力を導入することで表そうとしたのは何であったか?前回の式(4)と今回の式(1)とを比較することでその答えは見出せよう。
現在において、古典的弾性理論は、もはや何らの学問的進展ももたらさないと考えられてきたことも否めない。しかし、新しい理論に則るとき、これからやらなければならないことが多い。いや、これからが出発といえるかもしれない。若い研究者が、新しい理論体系を確立することを願ってやまない。
次回以降、材料強度と弾性応力との関連、数値計算結果等について触れてみたい。 参考文献
今井功: 流体力学(前編)(1973) 裳華房 428p
仲座栄三(2005):物質の変形と運動の理論 ボーダインク 421p
ランダウ=リフシッツ (佐藤・石橋訳)(1972):弾性理論 東京図書出版 275p
Fung,Y.C.(1994):A First Course in Continuum Mechanics, Third Edition, Prentice Hall, 311p
Lone,A.E.H.(1944):A Treatise on the Mathematical Theory of Elasticity, Fotrth Edition, Dover Publication, 641p
Timoshenko, S.P (1983):History of Strength of Materials. Dover Publications, 452p
elasticity theory 06
キーワード:フックの法則、平均応力等方応力、偏差応力、弾性係数、熱力学、状態量、圧力
新しい弾性理論は、従来の弾性理論におけるフックの法則の一般式を否定し、従来の耐力診断のための応力表示を正しくない、と指摘している、それは、学問的な議論はともかくも実務の面から聞き捨てならないことであろう。しかし、その実態は、材料の1軸圧縮問題を考えれば簡単に理解される事でなかろうか? 我々は、1軸圧縮の際、材料が横方向にいかように変形し、そして破壊していく場合であっても、材料はその方向に何らのストレスも受けていないと評価しているのである。実務者は、この事実を恐ろしい事だと思わずにいてよいのだろうか? 今回の内容は、少しばかりの式を用いて、従来の弾性理論の問題点を議論するものである。当然ながらこの議論は、流体力学における粘性応力の議論と軸を一つにする。
材料の変形と応力とに比例関係を認めると、フックの法則は一般に次のように書けよう。
この式の中で、σ(シグマ)は応力 ε(イプシロン)はひずみ(材料の相対的な変形量である)係数C は比例定数であり、一般には弾性係数と呼ばれる。
さて、従来の弾性理論は、式(1)を次のように、平均応力とそれからズレの成分である偏差応力とに分けられる。
「これでは、右辺は左辺と同じで、何をやっているのかわからない!」そのとおりである。でも、もう少し見て行きましょう。
式(2)の右辺第1項は平均値であるから一般には座標変換によって不変である。その結果、この項は等方応力とも呼ばれる。それに対し、第2項は非等方応力あるいは偏差応力と呼ばれる。これは、呼び方なので、どのような名前で呼んでもよいのだろうが、等方応力とか偏差応力とか、特別な名前で呼ばれると、何だかそれらが特別な物理的意味を持つのではなかろうかと錯覚してしまう。式(2)は、それが示すように、ただ平均値とそれからのズレの成分とに分けただけれあることに注意を要しよう。 ここで、式(2)の右辺第1項を次のように左辺に移動してみても殆ど意味をなさない。
以上に示すように、従来の弾性理論において、式(2)の右辺に示す各項を色々と移動してみても何ら意味も与えられない。 上の議論と本質的に同じ事であるが、従来の弾性理論は、ひずみを平均ひずみとそれからのズレの成分とに分けて、式(1)が次ぎのように表せるものと考えている。
ここに、ε バーは、ひずみ ε の平均値である。ここで係数Kは体積弾性係数、G はせん断弾性係数と呼ばれる。この場合も呼び方なので、どうでもよいだろうが、単に平均値とそれからのズレの成分とに掛かる係数と言い切ってしまうと、情けないものの言い方となってしまうだろうか? よく考えてみると、式(4)において、ひずみの平均値と、それからのズレのひずみ成分とに、それぞれ異なる弾性係数が掛かるというのも不思議なことである。平均値が単に算術平均を表すものである以上、それら比例定数の物理的意味が問われることになるだろう。 当然ながら、上の論議と同様に、式(4)の右辺第1項を次のように左辺に移動してみてもあまり意味をなさない、両辺とも応力の平均値からのズレを表すのみであるし、両辺が等しいという意味合いしか表してくれない。
しかし、そうであっても、従来の弾性理論は、応力の平均値からのズレの成分である偏差応力を材料の降伏や破壊など物理現象の発生条件に用いており、それが材料固有の何らかの物理的特性を表すものでないかと考えているようである。式(4を次のように変形してみるとどうだろう。
あるいは、もう少し変形して
式(1)は、応力発生に関わる相対的変形量の全てがひずみ ε を以って表せると主張している。これに対し、式(7)の右辺第1項には、ひずみ ε に加えて平均ひずみ ε バーまで必要とされている。「応力発生に関わる相対的変形量の全てがひずみ ε を以って表せる」とする立場からは、「式(7)の右辺第1項は要らないはずだ!」と主張されよう。 Lame'は、式(1)の係数に対象性と等方性を適用して式(7)を得ている。当然ながら、「式(7)の係数 λ の物理は何なの?」と問われよう。だが、この問に、これまで誰も答えてきていない。 ここで「係数 λ の物理意味がわからない!」また、「係数 λ の項は余計なもののように思える!」という声が聞こえてきそうである。 それでは、式(7)の平均をとってみよう。
この式の括弧内の係数は、左辺に示す平均応力と平均ひずみを結ぶ比例定数であり、平均応力や平均ひずみが体積応力や体積ひずみと同義であるから、その比例定数の物理意味は、体積弾性係数を表すものであると定義されている。 だが、我々は、この比例定数が単に「平均応力と平均ひずみを結ぶものである」ことを忘れていない。 実は、式(7)は Lame'の与えたフックの法則を表す。式(7)に対して投じられた、「係数 λ の物理意味はなんなの?」というという問いに適切な物理的回答を与えることはできないが、その値だけなら、関係式λ=3K-2G を通し、K とG の実測値から、求められる。 従来の弾性理論は、こうして平均値からのズレの応力成分を表す偏差応力に何らかの物理的意味合いを持たそうとするものであり、またその大きさを降伏条件や破壊条件にすえるものとなっている。 しかし、偏差応力とは何であったか?式(2)や(3)がその全てを語っている。 「係数 λ の物理的意味がわからない!」また、「係数 λ の項は余計なもののように思える!」新しい弾性理論では、それをそのとおりだあると考える。我々は、応力発生に必要な材料の相対的微小変形を表すにひずみ ε を加えて、その平均値を別に考える必要はない。したがって、応力と変形とが比例するという、フックの法則を表すだけなら、次のように書けることで十分である。
読者は、圧力p を左辺に移動してみたり、外力が作用しない場合を想定したり、あるいは熱を伴う場合を想定してみたり・・・と色々この式がどういう意味をもたらすか、上記の議論に沿いながら検討していただきたい。 平均とそれからのズレとで、物事を捉えようとしていた従来の弾性理論との違いの大きさに驚かされるに違いない。 次回以降、そのことについて説明することとする。 参考文献
elasticity theory 05
キーワード:運動方程式、Navier-Stokes 方程式、支配方程式
参考サイト:http://okinawa-repo.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/20.500.12001/19965
できるだけ、式を用いず、言葉を用いて説明する。というのが、本講座の趣旨であるが、言葉だけでの説明では不安という方のために、そしてはやく結論を見せてほしいという方のために、提案される支配方程式と従来の支配方程式の比較を示すことにしよう。 しかし、方程式の形だけの比較では、無味乾燥である。当然ながら、本質はその奥深くにある物理の違いにある。その違いは、様々なことの瓦解に通じる。ぜひ、違いの醍醐味を味わって頂きたい。 天の楕円運行は、離心円を複雑に組み合わせることで、正確に予測することもできた。予測は楕円でも円でも殆ど同じ結果を与える。円には神通力があった。楕円にはなぜ楕円なのかを説明する必要性があった。両者の物理的世界観の違いはもはや語るまでもない。
[ ]の項は、Newton の粘性法則に規定される粘性応力の寄与を表す。従来の支配方程式は、全ての流体に対し、体積粘性係数 を実験的に求めるかあるいは Stokes の仮説を導入し、Navier-Stokes equation を得るかのいずれかになる。しかし、ほとんどの流体に対し、体積粘性係数は求められていない。また、それを実験的に求めることも困難である。 Navier-Stokes equation の場合、運動の支配方程式が次元により異なり普遍性に欠ける。仲座の式は、通常の圧力下の通常の流体運動に対して、 粘性応力を規定する Newton の粘性法則に、第2粘性係数あるいは体積粘性係数の存在を認めていない。
[ ]の項は、Hooke の法則に則る弾性応力の寄与を表す。従来の支配方程式は、圧力項の箇所に平均応力が入っているか、あるいは体積弾性係数の項が入っているかのいずれかになる。熱まで含めたエネルギー保存則では、この平均応力の符号を変えたものが圧力と見なされる。体積弾性係数を導入すると、全ての内部応力が Hooke の法則に規定され、等温状態を考えると、能動的に材料に変形を引き起こす内部応力を認めることができない。 また、次元変化に対し、普遍性を持たない。これに対し、仲座の式は、例え等温状態変化であっても密度変化に応じた圧力変動が能動的に材料に変形をもたらせることが可能である。また、熱力学の関係式を正確に導入できる。Hooke の法則に関わる弾性係数はただ1つとされる。次元変化に対し、普遍性を持つ。
[ ]の項は、Newton の粘性法則に規定される粘性応力の寄与を表す。 従来の支配方程式は、全ての流体に対し、体積粘性係数 を実験的に求めるか、あるいは Stokes の仮説を導入し、Navier-Stokes equation を得るかのいずれかになる。しかし、ほとんどの流体に対し、体積粘性係数は求められていない。また、それを行うことも困難である。Navier-Stokes equation の場合、運動の支配方程式が次元により異なり普遍性に欠ける。 仲座の式は、 機械的粘性応力を規定する Newton の粘性法則に、第2粘性係数あるいは体積粘性係数の存在を認めていない。 なぜ従来の支配方程式に、1/3という次元数に関わる係数が存在するか? その答えはすでに説明してあるように、圧力項に内部応力の平均値である平均応力を導入したからである。係数1/3を伴わない従来の式には、必ず第2の物性(粘性あるいは弾性)を表す係数として第2粘性係数や Lame の第2弾性定数が必要になる。 だが、その第2の物性に関わる係数とは何かの議論が Navier や Green の後、物理学者も巻き込んで、1世紀以上にもまたがり繰り広げられている。しかし、その結論はどこにも見ることができない。例えば、流体の場合、実験的に第2の物性に関わる第2粘性係数を求めたという記録はないようである。粘性と熱的内部過程に現れる非可逆的作用とは物理の特性が明確に異なることに注意を要する。こうして、状態量としての圧力と平均応力との違いは大きい。 従来の理論と提案される理論との物理的の違いとは何か? 次回以降その違いについて説明していこう。
elasticity theory 04
キーワード:ヤング率、ポアソン比、体積弾性係数、せん断弾性係数、Lame 定数、弾性係数、圧力
等方性材料の弾性係数が1つか2つかの論争は、ナビエやポアソン、そしてグリーンらの時代を緒として、一世紀以上にもまたがり続けられている。その論争は、同時に流体の第2粘性係数は存在するか?という問題と密接に関わっている。この弾性論争は、「2つの弾性係数を用いた方が実験値を精度良く表せる」とする結論に収束している。 それでは、その2つの弾性係数とは何か? そのことについて議論することが今回の主たる内容である。 弾性学や材料力学書などを調べてみると、6つの弾性係数が現れる。それらは、通常、ヤング率、ポアソン比、体積弾性係数、せん断弾性係数、2つのラメ定数からなる。理科年表を調べてみると、第2ラメ定数、いわゆる λ の値は表記されず、ヤング率、ポアソン比、体積弾性係数、せん断弾性係数(ラメの第1定数 G に同じ)の実験値が示されている。 ラメ定数は、一般には4階係数テンソルから、対称性と等方性を仮定して、数学的に導入される係数であり、独立した弾性係数であることは認められているものの、第2ラメ定数の物理的意味は与えられていない。それがゆえに、理科年表等ではその実験値が表示されていないのかもしれない。 弾性波などの理論的展開には、ラメの2つの定数を用いた方が単純な表記となる。したがって、理論解析にはラメの定数をそのまま用いている場合が多い。しかしながら、その物理的意味については議論されていない。 簡単な実験で容易に求められる係数は、ヤング率とポアソン比である。したがって、この2つの係数の組み合わせが工学の分野で好んで用いられている。一方、せん断弾性係数は、滑り等が興味の対象となる地盤工学や金属の材料学などでよく用いられているようである。 ヤング率とポアソン比の組み合わせは、ポアソン比が弾性係数を表すものでないので、2つの弾性係数の組み合わせになれない。ヤング率は、ポアソン比を導入して初めて、実材料の弾性係数を表す形になっているので、ポアソン比が弾性係数を表すものでない限り、工学的に便利な実験定数となり得ても、物理的に定義される弾性係数にはなり得ない。(ポアソン比の導入に当っての、物理的問題点等については、今は触れないでおこう。) 従来の弾性学では、体積弾性係数が体積応力と体積ひずみを結ぶ比例定数と定義され、せん断弾性係数はせん断応力とせん断ひずみを結ぶ比例定数と定義されている。しかしながら、座標軸の回転により、せん断ひずみは主ひずみ方向のひずみに変換される。体積ひずみは主ひずみの和からなるので、体積弾性係数もせん断弾性係数も共に縦ひずみに関わる係数であることを示せる。したがって、同じ縦ひずみに独立した2つの弾性係数が必要とされる所には物理的疑義を投じられよう。 このことをよくよく考えてみると、先の体積応力や体積ひずみの関係はたんに内部応力の平均値とひずみの平均値との関係を表してことに気づく。さらに、せん断応力とせん断ひずみとの関係は、正確には偏差応力テンソルと偏差ひずみテンソルとの関係を表している。そして、この偏差応力とは内部応力から平均応力を差引いた残りに過ぎない。 したがって、体積弾性係数やせん断弾性係数を求めることは、たんに内部応力の平均値とそれからのズレで表される応力とに関わる係数を実験的に求めているにすぎない。こうして、体積弾性係数やせん断弾性係数は、ヤング率やポアソン比と同様、実験的あるいは経験的に容易に求められる係数であっても、特段に物理的意味を有するものでないことを示せる。 弾性体に2つの独立した弾性係数の存在が仮定されるとき、それらが確定していないと物理的に不都合を生じる。なぜなら、そうであるとき、我々は、例えば、1つの弾性係数が同じで、他方のみが異なるとする材料を見分けられないからである。 仲座によって提案されている理論は、これまで物理的意味が与えられてきていないラメの第2定数に、材料内部の状態量としての初期圧力(状態変化が等温であるとき)という物理的意味を与えている。そして、機械的弾性に関わる係数はただ1つであり、それがフックの法則の弾性係数であるとしている。したがって、フックの法則を表すに弾性係数はただ1つ存在し、それはたんに弾性係数と呼ばれることが推奨されている。 それでは、単一定数論者の再来でないか! と心配されそうだが、その心配は必要ない。材料には、“能動的”に変形を引き起こし得る状態量としての圧力が存在することを忘れてはならない。従来の弾性理論は、フックの法則に2つの機械的弾性係数を導入するものであるがために、自ら作用して材料に変形を引き起こさせるような(能動的な)内部応力の存在を見出だしていない。 材料の1軸圧縮の横方向応力と横ひずみとの関係を例にとればすぐに理解されるように、従来の弾性理論に則るとき、我々は、材料がいかように横方向に変形していても、その方向に応力がなんら作用していないとする判断すらも下してしまう。 こうした問題が生じるのも、全て、機械的弾性係数を2つと定義しているところに、その要因があるいと言える。次に議論しなければならないのは、圧力と平均圧力の違い、そして熱力学との関連であろう。この点は、後に議論される。
elasticity theory 03
キーワード:圧縮強度、引張強度、一軸圧縮試験、破壊、脆性破壊、破壊基準
http://data.jci-net.or.jp/data_pdf/31/031-01-1074.pdf#search=%27%E5%BC%BE%E6%80%A7%E4%BF%82%E6%95%B0+%E4%BB%B2%E5%BA%A7%E6%A0%84%E4%B8%89%27一軸引張試験で材料を破断させるとき、材料の引張強さが計測される。これに対し、一軸圧縮試験で材料を破壊させるとき、材料の圧縮強さが計測される。これら引張強さと圧縮強さとには通常 10 倍程度の強度差がある。圧倒的に圧縮に対して材料は強い。
一軸引張試験で材料を破断させるとき、材料の引張強さが計測される。これに対し、一軸圧縮試験で材料を破壊させるとき、材料の圧縮強さが計測される。これら引張強さと圧縮強さとには通常 10 倍程度の強度差がある。圧倒的に圧縮に対して材料は強い。 実験を注意深く見ていると、引張試験の場合、材料は引張面すなわち最大主応力面でちぎれるように破壊している。圧縮試験の場合、載荷軸方向にほぼ平行な面に沿い、あたかも載荷軸と直方向に引張応力が作用したかのように破壊している。 引張試験の場合、現象的に見ても引張による破壊であることは明白であり、したがって材料の強さを引張強度でもって評価しても問題はなかろう。これに対し、圧縮試験の場合、圧縮面に沿って破壊している訳でないので、圧縮強度というのも現象的に納得し難い。 破壊は最大主応力面すなわち最大主ひずみ面にほぼ平行であるから、先の一軸引張試験のように、実はその面に何らかの引張応力が作用したのではないか?と考えさせられてしまう。
だが、従来の弾性理論はその面に何らの引張応力も作用してなく、母線に対し横方向の応力はゼロだと説明する。応力ゼロを以って強度とするわけにもいかず、観察される現象に反し、圧縮強度を以って材料強度と設定されることになる。
一軸圧縮試験において、試験体端面のマサツ処理が十分でない不十分な実験の場合、材料は通常母線方向からほぼ 45 度方向に主亀裂を見せ破壊に至る。こうした未熟な実験結果は、せん断応力で材料が破壊したのではないか?とする誤った観察をもたらせる。こうした観察結果が、偏差応力やせん断応力に基づく破壊基準の導入をもたらすに至ったのではないかと推測される。
しかしながら、試験体の端面マサツ処理を注意深く行った理想的な一軸圧縮実験結果は、100 回に 100 回とも、材料が最大せん断面での破壊でなく、それに 45 度も傾いた方向、すなわち母線方向にほぼ平行に破壊面を持つことを教える。45 度は内部マサツ角にして 90 度を意味し、せん断破壊という考えを一掃させてしまう。
一軸圧縮試験の場合であっても、現象にすなおに、最大主応力を持って材料強度が評価できないものだろうか? 仲座の理論は、その問に、そしてその期待に答えるものとなっている。そのことで、応力評価の対象が圧縮応力であったり引張応力であったりとぶれることもなく、複合応力や熱を受ける場であっても、一貫した応力評価が可能となる。
elasticity theory 02
そしてナビエ − ストークス(Navier-Stokes)方程式の問題点
キーワード:フックの法則、圧力、平均垂直応力、静水圧応力、等方応力、偏差応力、体積弾性係数、せん断弾性係数、熱力学、状態量、Navier-Stokes 方程式
常識的に言って、フックの法則やNavier-Stokes 方程式に物理的定義上の問題点があるとは信じがたいし、あろうはずがない。そうでないと弾性学や流体力学は成り立たない。これが一般的な常識であろう。 しかし、以下の説明を読んで頂きたい。そのとき、問題点が何であるかがはっきりするに違いない。 以下の説明は、すでに文献1)に述べられていることだが、一部記載ミス等があるので、ここにそれを簡潔にまとめ、言葉のみによる説明を試みる。 実験によって、座標軸方向の応力やひずみが観測されるとき、それらの平均値は応力やひずみテンソルの第1不変量と呼ばれる。テンソルの不変量とは、テンソル成分の演算によって作られるある量の値が座標変換によって不変であることを意味する。 観測された応力やひずみからこの第1不変量を差引いた残りの応力やひずみで偏差応力テンソルおよび偏差ひずみテンソルが構成される。 従来の弾性理論においては、その垂直応力の平均値が静水圧応力あるいは平均垂直応力とされ、弾性体の内部応力はこの等方応力としての静水圧応力と偏差応力とから構成されると定義される。ひずみにおいても、垂直ひずみ成分の平均値で与えられる平均ひずみ(等方ひずみ)と偏差ひずみに分けられる。そして、それら平均応力と平均ひずみ、偏差応力と偏差ひずみの間に比例関係が存在し、それらに固有な弾性係数がそれぞれ比例定数として存在すると定義される。このとき、それら比例定数は、それぞれ体積弾性係数およびせん断弾性係数と呼ばれている。 流体力学においては、垂直応力の平均値が平均圧力あるいは力学的な圧力と定義され、熱力学的な圧力とは別ものであると定義されている。そして、内部応力からこの平均圧力を差引いた残りがせん断応力と定義され、それが粘性応力とされている。したがって、粘性係数とは、ニュートンの粘性法則に則り偏差ひずみ速度テンソルと偏差応力テンソルすなわち粘性応力テンソルとが比例することを表す比例定数と定義される。 Navier-Stokes 方程式は、内部過程にもとづくエネルギー消散を無視できるような通常の流体運動に対し、力学的な圧力を熱力学的な圧力と見なしてよいとしている。この仮定はストークスの仮説と呼ばれる。このとき、粘性応力は平均値からのずれの偏差応力成分のみからなることになる。文献7)参照。 流体運動に内部過程が無視できない場合、状態が平衡に向かう過程は一般に非可逆であるから、それを表すに粘性応力の平均値が現れ、それが体積粘性応力であり、かつ体積ひずみ速度(垂直ひずみ速度の平均値)に体積粘性係数を乗じて与えられるとしている。 したがって、内部過程が無視できるような通常の流体運動に対しては(局所的熱平衡状態が仮定されるとき)、体積粘性係数をゼロと設定してよく、粘性応力は平均値からのズレの偏差応力のみで与えられると定義されている。その結果、そのような流体運動に対しては、垂直応力の平均値として与えられる力学的圧力を熱力学的圧力と等価と見なしてよいと定義されている。それゆえに、熱を含めた流体運動のエネルギー保存則が成立する形になっている。 以上の説明で読者はすでに気づかれていると思うが、Navier-Stokes 方程式の物理的定義上の誤りは、圧力の定義と粘性応力の定義にある。内部過程が無視できるような通常の流体運動に対し、粘性応力が応力の平均値からのズレのみで構成されるはずがない。ましてや、内部応力の平均値を以って圧力と定義できるはずもなく、それが熱力学的に定義される圧力と等価と見なせるとする近似すらもなりたたない。それが成立するのは、非粘性流体か非圧縮流体の場合のみである。オイラー(Euler)が与えた方程式は前者の場合にあたる。 ストークス自身は、Navier-Stokes 方程式を与え、「我々の身の回りの運動の多くが非圧縮的であるから、私の方程式による予測と実現象が一致したからといって、私の仮説を証明したことにはならない」と述べている。まさにその通りと言えよう。
さて、弾性学におけるフックの法則の場合はどうであろうか? 垂直応力の平均値を求め、そして内部応力をそれとそれからのズレに分離したとしても、それは例えば実験値で平均値とそれからのズレを求めたにすぎない。平均応力は応力の平均値以上の意味を持つはずもない。であるから、そうした平均垂直応力と偏差応力とにそれぞれ対応する弾性係数が存在したとしても、それは物理的に何ら意味をなさない。そうであるとき、そのような形に定義される経験式をフックの法則と呼ぶことはできない。これは、流体の粘性法則にもそのままあてはまる。 さらに言うなら、ヤング率やポアソン比も客観的な物理係数になれない。なぜなら、ポアソン比の導入が客観的な導入となっていないからである。ここで言う、客観的とは座標変換による不変性を意味する。
数式を用いた説明は後に行う予定である。
<参考文献>
仲座栄三(2005):物質の変形と運動の理論、ボーダインク、 421p.
Stephen P. Timoshenko(1983):History of Strength of Materials、 Dover Publications, 452p.
Y. C. Fung (1994): A First Course in Continuum Mechanics, Third Edition, Prentice Hall, 311p.
ランダウ=リフシッツ(佐藤・石橋 訳)(1972):弾性理論、東京図書出版、 275 p。
ランダウ=リフシッツ(竹内仁 訳)(1970):流体力学 I、東京図書出版、pp.1 −280。
ランダウ=リフシッツ(竹内仁 訳)(1971):流体力学 II、東京図書出版、pp.281−275。
7)G. K. Batchelor (1967): Fluid Dynamics, Cambridge University Press, 615p.
elasticity theory 01
昔の茶碗や皿は熱に弱かった?
キーワード: 熱力学、弾性学、材料力学、フックの法則、平均応力、偏差応力、破壊
参考サイト:http://okinawa-repo.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/20.500.12001/19965
http://data.jci-net.or.jp/data_pdf/31/031-01-1074.pdf#search=%27%E5%BC%BE%E6%80%A7%E4%BF%82%E6%95%B0+%E4%BB%B2%E5%BA%A7%E6%A0%84%E4%B8%89%27ロバートフック(R. Hooke)がフックの法則を発表してからすでに 3 世紀を過ぎている。石や木、鉄やコンクリート、そして土など、われわれの身の周りにある材料に対して、フックの法則はいかように書けるか? 驚くべきことに、その問いにこれまで正しく応えてきていないことの事実に気づかされる。
一昔前の私の経験だが、少し温かい熱湯を注ぐだけでよく茶碗や皿などが割れたものである。 子どもの頃、家族で木箱のようなテールを囲み食事しているとき、味噌汁をご飯に混ぜて食べるのが好きだった私は、ご飯茶碗に味噌汁を注ぎ、はしで少しつつきながら茶碗の中のご飯をかき混ぜた。 すると、殆ど力を加えていないにも関わらず、茶碗の底に突然穴が開いてしまった。 その穴から味噌汁が漏れ、ズボンにぽたぽた落ちる。親父に怒られに決まっている。 怖くて、茶碗をテーブルの下に隠し何事もないように食事を続けた。 必至に指で穴をふさぐがもれる汁がズボンを濡す。 食事どころでない私に、母親は「もっといっぱいたべなさい」、「いっぱいたべないと大きくなれない」という。 怖くて泣きべそ状態の私に、親父は、「肉がもっとたべたいのか?おとうの肉をあげる」といって「茶碗をよこしなさい」という。 ・・・ 本当に恐ろしかった。ところで、昔の茶碗は何でああも熱に弱かったのだろうか?
さて、熱で茶碗が割れる問題を力学的に考えてみよう。こうした問題を取り扱う学問は、材料力学、あるいは弾性力学(弾性学)などと呼ばれている。
材料力学では、一般に材料に加えられる力と材料の微小な変形量とは比例関係にあるとされる。この関係は、わたし達が日常経験する事実でもある。この、作用応力と材料の変形量との比例関係は、一般にフックの法則と呼ばれている。材料力学や弾性力学の礎をなす物理法則は、このフックの法則である。 建物の柱や梁、あるいは擁壁などが力学的に安全かどうかは、材料内部の応力を調べることで判断される。例えば、コンクリート構造物などは、コンクリートが圧縮に強く引張りに弱いことから、引張応力の存在箇所があるかどうかがチェックされる。引張応力の作用箇所があると、そこは構造的に弱い箇所だと判断され、要注意箇所とされる。 材料に熱をゆっくり加えていくとき、材料は一般に膨張を見せるものである。 ところが、この場合、変形がいくら生じていても、さきほど調べた材料内部の応力はいたるところゼロだと説明される。 したがって、茶碗が熱湯を注ぐときに割れる現象を、さきほどのコンクリート構造物のときに用いたような引張応力を調べるという方法では説明できない。 材料力学は、材料が熱を加えることで膨張するのは、“熱膨張”によるものだと説明する。ところが、物理学を調べてみると、熱と関連する応力は“圧力”だと明記されている。しかも、圧力は温度のみで規定されるのでなく、材料の密度とも密接に関連しており、状態方程式という熱力学の関係式で規定されると述べられている。 だとすると、先に述べた材料力学の熱膨張にもそれを引き起こす応力の存在の説明が必要となる。従来の弾性学いはこうした応力の存在が仮定されていない。 ところで、材料は膨張に伴う密度変化も受けているはずである。この材料密度の変化に伴う応力変化が説明されていない。 熱力学は、状態方程式を通じ、「圧力変化は一般に密度変化と温度変化からなる」と述べている。材料の熱膨張が示すように、内部応力が温度や密度など材料の状態量に依存しているのは当然といえよう。 すなわち、材料内部には材料の状態量に依存する応力が存在するものと仮定できる。 フックの法則は、材料のひずみ(相対的変形量)と応力との関係を規定する物理法則であって、材料の状態量と内部応力との関係を規定するものでない。 すなわち、材料には内部応力としてフックの法則に規定される応力とは別に、熱力学的に規定される応力(それが圧力と主張される(文献 1)参照)が存在するのである。
<以上を要約すると>
結論として、内部応力が“フックの法則に支配される応力のみで構成されるとする従来の弾性学の定義は誤りと言える。また、静水圧応力(平均応力)、偏差応力などを定義したり、材料の降伏基準や破壊基準に偏差応力やせん断ひずみエネルギーなどを参照したりする方法にも物理的根拠は何らないものと結論される。 次回以降において、数式展開とあわせて、さらに詳しい説明を行うことにする。
<参考文献>
elasticity theory 09
2007 年は,オイラー(Euler)が流れの基礎理論を発表してから 250 年の節目に当る。
それを記念し、フランスでは、流体力学に関する国際会議が開催される。その節目の年にささやかながら、本講座を立ち上げ、新しい基礎理論を多くの方々に触れていただく機会を設けることとした。 同時に、私自身もこの機会を通じて多くの方々とこの問題に関して情報交換や議論等ができればと望んでいる。
フックの法則は、弾性学、弾性力学、構造力学、材料力学、土質力学・・・など多くの分野の力学理論の礎をなしている。しかも、その理論構築はそのまま流体力学の基礎理論の構築に反映されている。 本講座ではそのフックの法則からスタートし、仲座(2005)によって提案されている新しい弾性理論の概要までを学ぶ。なぜ新たな理論が必要となるか? なぜ従来の理論ではダメなのか? その詳細が説明される。
弾性理論は,フック(R. Hooke)に始まり、ヤング(Young)、ナビエ(Navier)、コーシー(Cauchy)、ポアソン(Poisson)、ストークス(Stokes)、ラーメ(Lame )などを経て現在の体系となっている。 その構築課程を学ぶことは、弾性理論のみでなく流体力学の基礎理論の深い理解に必要不可欠と言える。
講座では、あまり数式を使わず、思考することに趣をおき、できるだけ言葉による説明をとることとした。 以下にアインシュタインによる相対性理論の序を紹介し、本講座の序に代えたい。
「動いている物体の電気力学を考究しようとするとき、我々が直面するいろいろの困難はすべて、上に述べたような事柄に対して、いままでに十分な考察をしなかったことがその原因である。」− 山内龍雄訳
幾度となく読み返すが、いつも新しい響きと感動を与えてくれる。
私の研究上での聖書となっている。
参考サイト:http://okinawa-repo.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/20.500.12001/19965
Thermal Expansion and Thermal Stress
参考サイト:http://okinawa-repo.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/20.500.12001/19965
http://data.jci-net.or.jp/data_pdf/31/031-01-1074.pdf#search=%27%E5%BC%BE%E6%80%A7%E4%BF%82%E6%95%B0+%E4%BB%B2%E5%BA%A7%E6%A0%84%E4%B8%89%27Some examples of simulation results using New Theory of Elasticity proposed by NAKAZA (2005) have been shown.
仲座の新弾性理論を用いて、弾性体の解析を行った事例を図ー1にご紹介いたします。
計算条件は、茶碗の内部の水が上層ほど高く、その状態に、さらに2本の指で茶碗を点圧縮した場合を想定。図は弾性応力の最大主応力(引張応力)分布です
The top is the stress distribution corresponding to the heat distribution. the bottom is the stress distribution governed by Hooke's law. Deployed the new theory of NAKAZA, Numerical simulation was done by Associate Professor Dr. J. Tomiyama.
これらの数値計算結果は、当時琉球大学工学部環境建設工学科(現在、社会基盤デザインコース)材料研究室の富山潤さんの協力を得て実施されたものです。詳細は、後の章で議論されます。潤さんに感謝です!
私が特に強調いたしたいのは、仲座の新弾性理論を用いるとき、温度の分布に沿う形に応力表示ができている点、そして指2本の力の作用、すなわち外力の作用による応力の分布が区別できるように、計算できているという点です。
従来の理論ならば、変形について、上述と同様な解析結果が得られたとしても、熱の分布に対応する応力はゼロであり、外部応力(境界の制限)に従う応力のみが存在することになります。
さらにもう少し説明すると、熱による膨張があり、その膨張が外部境界で制限を受けるので、その制限の効果を受けて内部に応力が発生する。この応力が従来の弾性学では、なぜか”熱応力”と呼ばれるのだが、それと外部の応力との和が、従来の理論では不可分的に解析されます。
私は、当初、温度の分布に従って現れる応力が存在し、それが熱応力であると考えていたのですが、調べてみると、そうでなく、熱で膨張した変形を外部から境界条件として制限することに応じて現れるのが熱応力であることを知りました。
これには驚きです。境界からの制限は、その境界から与えられた外力の効果であって、温度分布に対応する応力ではありません。
従来の弾性理論では、温度分布に対応したひずみがあることを認めているのに、こうして温度分布に対応する応力は存在しません。これを知った時は、唖然といたしました。
これと似ているのが、例えば、1 軸圧縮の際の横方向の変形です。変形は存在すれど、その変形の程度に応じた応力が存在しません。
木に竹を繋ぐという言葉がありますが、私には、従来の理論がそうした工夫をしているように思えてしかたありません。呪縛から抜け出すには相当な難儀を必要とします。
共に学びましょう!