やり直し力学5 新たな運動の法則
inertia mass, action and reaction of a force, motion equation
これまでの説明において、慣性の法則は、観測者に対して静止している物体が静止し続ける性質として述べられ、質量は物体が静止し続ける慣性の大きさを測る物理量として定義された。運動方程式は、静止した物体が力の作用で相対速度をいかように獲得するかを規定する法則として定義された。これらの定義は、従来の教えとは異なるものである。
従来の教えを、まるで聖典の教えのように信じてきた筆者が、このような結論に至ったのは、相対性原理の下に力学をどう統一していくかを考え続けたことにある。
相対性原理によれば、2者の内で、いずれが絶対的に静止し、いずれが絶対的に一定速度で運動しているものかを決定することはできない。すなわち、「一定速度で運動している物体」と観測者が設定しても、その物体の上に座す観測者からするとその物体は「静止し続けている物体」となる。「力を受けた方が動いたのに決まっている」そう考えても、以下に議論する「作用・反作用」の法則によれば、いずれもまったく同じ力を受けていることになる。
これでは、運動方程式は誰に対しての物理法則となるのかが定まらない。そこで、我々は、運動の法則の適用を、観測者に対して静止している物体に限定したのである。これによって、運動方程式は、だれが運動している者かを問う必要がなくなり、目前に静止している物体に対して適用できることになる。
観測者が目前に静止している物体に力を作用させると、物体も同じ大きさで逆向きに力を作用させてくる。これが「作用・反作用の法則」である。その結果、観測者と物体とは共に同じ大きさの相対速度を持つ関係になる。その相対速度の獲得方法を決めるのが、運動方程式となる。運動方程式は、前回の式(3)で与えられている。以下に再掲する。
mdv=fdt (1)
ここに、dvは両者間に現れた微小な相対速度、mは静止慣性質量、fは作用力、dtは力の作用時間を表す。
もし、作用・反作用の法則が存在しなければ、誰が力を作用させたかが分ってしまい、「動き出したのは誰か」が決定され、絶対的に運動しているのは誰なのかが確定してしまうことになる。そのようなことでは、相対性原理に背くことになる。したがって、作用・反作用の法則は、相対性原理が力に付与した一種の性質となる。こうして、「力」は、相対性原理の下に、作用・反作用の性質を持つものとして現れる。すなわち、作用・反作用は力に付与された一つの性質である。
ここで、新たな運動の法則が、次のように完結する。
1)物体は、力の作用がなければ、観測者に対して静止し続ける慣性を有している。その静止慣性の大きさは、静止慣性質量をもって計られる。
2)観測者が物体に力を作用させるとき、物体は同じ大きさで逆向きに力を返す。
3)観測者と物体との間に力が作用するとき、両者間には相対速度が発生する。このとき、相対速度の発生量dvは、作用力の大きさfと力の作用時間dtとに比例し、静止慣性質量mに逆比例する。すなわち、次なる運動方程式が成立する。
mdv=fdt (1):再掲
ここに、従来のニュートンの運動の法則には表れてこない「観測者」が明示されている。これは物体の運動の認識には、物体が少なくとも二つ存在しなければならないことを意味しており、運動はそれら2者間の相対運動として現れることを説明している。すなわち、運動は相対性原理の下に現れるのである。新しく定義された運動の法則は、結果として三つの法則からなるが、それらはいずれも運動の法則として不可欠な存在となっている。
運動の法則からは、次のようなことが示唆される。
1)相対速度の発生には、必ず力の作用と時間の経過が関係している。
2)相対距離の広がりは、相対速度と時間に関係している。
3)静止慣性質量は、相対速度の変化時に顕在化する。
これらのことを宇宙膨張問題に当てはめてみると、宇宙が加速的に膨張しているのならそこには膨張加速を与える力が存在する。宇宙の広がりは宇宙の誕生からの時間経過にほぼ比例している。
以上によって、互いに静止状態から相対速度が発生するときの物理法則として、運動の法則が定義される。
次に、相対速度を有する物体間の力学について説明されなければならない。
仲座栄三